【講演録】山本昭宏さん講演会 ポピュラー文化からみた「核のイメージ」史(2017/4/15土@神戸)

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2017年4月15日に開催しました、歴史学研究者の山本昭宏さん(神戸外国語大学准教授)による講演です。

被爆国である日本が、「核」に対して戦後どのように向き合ってきたかを、ポピュラー文化という側面から考察しています。

また、その過程において、核(核兵器、原発、放射能)に対して、人々がどのようなイメージを抱き、国や利害関係者がどのようにしてイメージ形成を図ってきたかを詳しく解説しています。

・終戦直後から進駐軍がおこなった検閲により、被爆被害の実相を伝える報道や表現が著しく制限された
⇒被爆によって超人的なパワーを得るポジティブの描写などは検閲に通り、被爆がネガティブに語られるものは削除が命じられた。

・第五福竜丸事件によって、核兵器や放射能に対する批判的な国内世論が高まった
⇒それとほぼ同時期に、原子力に対する国の予算が認められる。

・原子力の平和利用の名のもと、漫画などを通じて原子力に対する肯定的なイメージが形づくられていった
⇒原子力に対して「愉快なもの」というイメージ作りまでおこなわれた。

・核兵器や原子力に対する懐疑的な見方が常にあるものの、その表現や世相が時代ごとに大きく異なる
⇒被爆した人や胎内被曝した人が病に倒れていく悲しいストーリーの作品や米国への復讐に燃える作風など、核に対する悲惨さをストレートな表現で伝えるものから、次第に遠まわしかつ控えめな表現へと変わっていく。

・娯楽雑誌や音楽雑誌が反核・反原発特集を掲載するという、大きなムーブメントが巻き起こった
⇒チェルノブイリ事故を機に、ミュージシャンが反核・反原発の声を上げる。

・危険なイメージのある原子力施設が登場する娯楽映画や番組が多数制作されたものの、安全神話寄りに作用した
⇒例えば、世界征服を狙う陰謀組織が原子力施設を攻撃し爆破すると宣言し、人々が恐怖におののく姿を描きつつも、正義の味方が彼らを退治し、結局原子力施設への爆破はされない様子がほぼテンプレート化。原子力は管理すれば安全、あるいは人間が抑え込めるという刷り込みに作用。

主に上記のような内容を、ふんだんな画像や資料をもとに解説されています。ぜひご覧ください。
(※会場での配布資料は、動画の中に連動する形で埋め込んであります)

◎開催概要
 非核の政府を求める兵庫の会 市民学習会
 ポピュラー文化からみた「核のイメージ」史

日 時 2017年4月15日(土)15:00~17:00
会 場 兵庫県保険医協会6階会議室
講 師 山本昭宏さん(神戸外国語大学准教授)
主 催 非核の政府を求める兵庫の会
協 賛 神戸YWCAピース・ブリッジ、市民社会フォーラム

日本人は戦後、どのように核兵器、原子力、放射能、被爆をイメージしてきたか?
『鉄腕アトム』や『ゴジラ』にはじまり、映画やマンガなどサブカルチャーやポップカルチャーの中で描かれてきた核のイメージを歴史的に考察した
『核と日本人 ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書)の著者・山本昭宏さんに講演いただきます。

山本昭宏(やまもと・あきひろ)さん
1984年奈良県生まれ。京都大学文学部卒。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。
日本学術振興会特別研究員を経て、現在、神戸市外国語大学准教授。専攻は日本近現代文化史、歴史社会学。
著書は『核エネルギー言説の戦後史 1945~1960 「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院、2012年)、
『核と日本人 ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書、2015年)、
『教養としての戦後〈平和論〉』(イースト・プレス、2016年)。