市民社会フォーラムは2017年1月21日、神戸学生青年センターにおいて、朗読劇を手掛けるつばめクラブと共催で、「それでも私たちはこの世界を愛する～日本人医師が見た占領下パレスチナ～」と題する講演会を開催しました。この講演会には、講師として医師の猫塚義夫さんをお招きしました。猫塚さんは、北海道にて整形外科医を務めるかたわら、北海道パレスチナ医療奉仕団の一員として、イスラエルによる不当な占領政策によって医療環境が悪化しているパレスチナを毎年訪問し、医療支援活動をボランティアとしておこなっています。その経験をもとに、パレスチナの人々のおかれた過酷な状況をつぶさに紹介し、日本で暮らす私たちに何ができるのかを問いかける重要な講演となりました。この中で、猫塚さんは、イスラエルによるガザ侵攻について、「定期性」「無差別性」「実験性」という3つの特性を挙げました。ガザがイスラエルによる「武器の実験場」となっているとしたほか、数年ごとの無差別攻撃を「定期的な芝刈り」に例え、「ガザの人々は悲惨な目に遭っています」と訴えました。また、パレスチナにおいて「医療破壊」が深刻であるとし、医療機器はもとより、薬剤や手術に使う資材など、あらゆる医療物資が欠乏している窮状を紹介。上下水道の不備による衛生環境の悪化、高い失業率や低賃金、鬱や麻薬が蔓延していることなどの問題点も列挙しました。そして、このような過酷な状況を生み出している当事者・イスラエルに対する日本政府による支援や武器協力について、「日本の人々はもっと知るべきです」と訴えるとともに、「そのような政権には退場してもらうということも、日本人としての大事な仕事ではないかと思います」との意見を述べました。
あわせて、大阪市立大学で研究員を務める今野泰三さんも登壇しました。今野さんは、日本国際ボランティアセンター（JVC）のパレスチナ現地代表を務めた経験をもとに、さまざまな問題点をはらむパレスチナ占領政策の非人道性などについて解説しました。とくに、イスラエル軍や入植者らによってパレスチナ人への暴力や抑圧が日常的に起きている現状を憂慮。また、パレスチナ人の元同僚の発した、「人間は今までの歴史で何を学んできたのでしょうか？ 世界は結局強い者がやりたいようにやるようになっています。小さくされた人々は、踏みにじられて、死んでいくしかないのでしょうか？」という切実なメッセージを紹介しました。このメッセージについて今野さんは、「イスラエルに対してのものでもあり、このような状況を改善できない国際社会に向けてのメッセージでもあると思います」と語りました。
司会を務めた京都大学教授の岡真理さんは、「今年で50年になるパレスチナ占領、今年で11年目に入る完全封鎖下のガザで、何が起きているのかということが報道されない。大量殺戮・大量破壊がないとメディアは報道しない」としたうえで、「パレスチナが忘れ去られ、50年にわたって占領が続いていること（を許している国際社会の無関心さ）は、この世界の恥だと思います」と自戒を込めて述べました。そして、パレスチナがおかれている窮状の啓蒙や国際支援の大切さを伝えるべく、2月18日と19日に神戸で実施する朗読劇を紹介するとともに、猫塚さんが活動している北海道パレスチナ医療奉仕団の取り組みについて、「まさに私たちの活動と軌を一にするものです」と語りました。
◎概要
市民社会フォーラム第194回学習会
朗読劇「ガザ 希望のメッセージ」プレ企画②
それでも私たちはこの世界を愛する
～日本人医師が見た占領下パレスチナ～
日 時 2017年1月21日（土）13:30 –16:30
会 場 神戸学生青年センター ホール
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講 師 北海道パレスチナ医療奉仕団
猫塚 義夫さん
進 行 岡真理さん（京都大学教授）
共 催 つばめクラブ
イスラエルによるヨルダン川西岸地区とガザ地区の軍事占領は、来年で50年目を迎えます。
半世紀にわたる占領のもとで、パレスチナ人は自由を奪われ、人間らしく生きる権利を否定されてきました。
西岸では無数の検問所が移動の自由を妨げ、ガザの人々は10年にわたり完全封鎖のもとに置かれ、繰り返し一方的な殺戮と破壊に見舞われています。
その占領下のパレスチナに、毎年、医療活動に赴く日本人の医師がいます。
札幌の整形外科医、猫塚義夫先生です。
医療活動を通して見えてくる占領の暴力の実態と、それでもなお、明日を信じて生きるパレスチナの人々の姿についてお話しいただきます。
【平和をめざす朗読集団 国境なき朗読者たちが贈る
朗読劇 The Message from Gaza ガザ 希望のメッセージ】
日 時 ①２月18日(土)18:30開演（17:30受付開始 18:00開場 20:30終演）
②２月19日(日)14:00開演（13:00受付開始 13:30開場 15:45終演）
会 場 神戸市勤労会館２階多目的ホール
詳 細 http://shiminshakai.net/post/1905
