【レポート】「禁じられた歌声」&トーク(2016/5/1日@元町映画館)

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元町映画館のイベントレポートより転載します。

2016.5.4
『禁じられた歌声』トークイベント開催しました!

西アフリカ、マリの古都ティンブクトゥを舞台に、イスラム過激派の弾圧に立ち向かう家族の戦いを描いた『禁じられた歌声』。公開を記念して、5月1日に甲南大学文学部教授である中町信孝さんをゲストにお迎えしてトークイベントを開催しました。

トークイベントではまず、マリ共和国の時代背景などについてご説明いただきました。簡単に舞台であるティンブクトゥのことが分かったところで、お次は劇中で話されていた言語を頼りに、登場人物のバックグラウンドについて触れていきます。トゥアレグ民族(主人公)のタマシェク語、バンバラ語、ソンガイ語…モスクの長老が話していたアラビア語(綺麗なアラビア語で、彼の教養の高さを物語ってる)etc…多様な民族が映っていたとのこと。こういったことは私には気付きようもないことなので、識者である中町さんにはどのように『禁じられた歌声』が見えていたのか?ぐんぐんトークに引き込まれていきました。

次に中町さんは「何を根拠に音楽を禁ずるのか?」を切り口に映画の主題に迫っていきます。ずばりイスラム教の聖典であるコーランには記載がないとのことでしたが、ハディース(イスラム教の預言者ムハンマドの言行録)には賛否どちらとも解釈できる記載があるそうで、このグレーゾーンにつけ込み(?)本作では音楽が禁じられているとのことでした。しかし注意すべきは中東諸国でこういった例はむしろ稀であり、ポップスが流れているのが普通だということ。映画で描かれたのはイラスム教に則っているというよりかは現地民を統治するための口実としてジハード(聖戦)を利用しているのでは?という解説がなされました。

以上、イベントの内容を簡単に紹介させていただきましたが、あくまでも私の拙い理解によるものなので、より詳しい、且つ正しい解説はぜひ中町信孝さんの著書をご覧ください。新刊の『「アラブの春」と音楽 若者たちの愛国とプロテスト』はアラブ世界のポピュラー音楽を分析しながら「アラブの春」について書かれた書籍となるのですが、当館にて『禁じられた歌声』上映期間中、関連書籍として取り扱っています。

こう書いていると難しい映画と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、本作は特に予習が必要な作品では決してありません。映画はフランスのセザール賞で最優秀作品賞を含む7部門を獲得した一級品のドラマであり、また画も音楽もすごく美しいので、ぜひスクリーンで観ていただきたいと思います。

(斉藤)

■□■市民社会フォーラム第64回映画鑑賞会■□■
「禁じられた歌声」

トーク:「禁じられた歌声、抵抗する歌声~「アラブの春」からISまで」
日 時:5/1(日) 11:50の回上映終了後
会 場:元町映画館2F
ゲスト:中町信孝さん(甲南大学文学部教授)

「禁じられた歌声」公式サイト http://kinjirareta-utagoe.com/
元町映画館公式サイト http://www.motoei.com/

※当日映画を観賞された方を対象、参加費無料。
※映画鑑賞料は下記サイトをご覧ください。
http://www.motoei.com/ticket.html(前売り券)
http://www.motoei.com/price.html(当日券)


  市民社会フォーラム恒例、一般公開の映画の鑑賞会。
今回は元町映画館で公開の「禁じられた歌声」とアフタートークです。

『禁じられた歌声』スペシャルトーク開催決定!
イスラム過激派に支配された西アフリカ、マリの世界遺産ティンブクトゥにほど近い砂丘の街を舞台に、
ある事件に巻き込まれた少女トヤの家族を描く『禁じられた歌声』。
セザール賞7部門を独占受賞し、フランスで100万人を動員した本作の公開を記念して、
2月に『「アラブの春」と音楽 若者たちの愛国とプロテスト』を上梓された中町信孝さんのトークイベントを開催いたします。