元町映画館のイベントレポートから転載します。
2019.2.17
『国家主義の誘惑』白井聡さんトーク開催しました!
フランス在住の渡辺謙一監督によるドキュメンタリー『国家主義の誘惑』公開2日目の2/17(日)上映後、映画にも登場されている政治学者の白井聡さんをお迎えし、「戦前・戦後と反復する日本の『国体』」と題してトークを開催しました。
日本の近代史を紹介しつつ「そして“今”、どうなっているのか」を国内外の論客によるインタビューも交え考察する本作。無謀な侵略戦争を繰り返した天皇制への反省をベースに戦後の国づくりをしたはずの日本が、なぜか戦前回帰しているのです。白井さんが戦前回帰を強く感じられたのは東日本大震災に伴う原発事故だったそうです。政府の対応は先の大戦時と酷似していたと言います。
回帰しているとはいえ「まったく同じに再現されることは歴史上あり得ない」と白井さん。たとえば国家主義=ナショナリズムが形成された19世紀的常識であった《お国のために死ぬ》という思想、これは“今”のナショナリズム現象では実現し得ず、今のナショナリズムは極めて無内容、から騒ぎでありフェイクとしてしか現れていないと続けられました。
天皇制ファシズムがまだ生きているとはいえ、天皇を批判しても「天皇制」の批判でしかなく空回りにしかなりません。今の天皇は、「天皇制の中の天皇」の役割を果たしていないからです。では、何がその役割を担っているのでしょう。それは《アメリカ》だと白井さんは言います。
“ネトウヨ”と呼ばれるインターネット上で右翼的な発言をする人たちの中には「天皇は反日左翼」と主張している人もおり、そこには論理矛盾が生じています。彼らには実際の天皇ではなく“心の中の天皇”がいるのだろうと白井さん。それは何かと言うと、やはり《アメリカ》なのです。今日本が回帰している奇怪なナショナリズムは、アメリカに支えられているに過ぎないと指摘されました。
このあたりのお話は、白井さんの著書「国体論:菊と星条旗」(集英社新書)に詳しく書かれています。ぜひご一読いただきたいです。
最後に、日本の戦後“国体”レジーム崩壊の兆しが見えている今に向け、マルクスの「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」という言葉を紹介されました。喜劇としていかに笑い飛ばせるか否かでその国の底力がわかる―さて、日本はどうなのでしょうか。
(mirai)
■□■市民社会フォーラム第107回映画鑑賞会■□■
『国家主義の誘惑』&白井聡さんトーク
日 時 2/17(日) 10:15の回上映終了後 受付開始は9:45
会 場 元町映画館2Fロビー
トーク「戦前・戦後と反復する日本の『国体』」
登壇者 白井聡さん(政治学者/京都精華大学専任講師)
※当日映画を観られた方対象、参加無料
※トーク会場は劇場よりも小さなスペースとなりますので、ご希望の方全員を収容できない場合がございます。
当日受付順にトークの整理番号を配布し、定員に達し次第受付は終了とさせていただきます。
映画館で公開される映画の鑑賞会。今回は『国家主義の誘惑』です。
『国家主義の誘惑』スペシャルトーク開催決定!
2015年公開の『天皇と軍隊』で話題を呼んだフランス在住の渡辺謙一監督が、「日中戦争前夜とどこか似ている」と感じる現在の日本の政治について、沖縄や憲法、天皇制、日米関係のあり方を問うドキュメンタリー『国家主義の誘惑』。公開を記念して、本作に出演する政治学者・白井聡さんをお招きしてトークを開催します。
■『国家主義の誘惑』公式サイト http://kiroku-bito.com/nationalism/
■元町映画館 https://www.motoei.com/