【レポート】『カーキ色の記憶』上映とトーク(6/16土、17日、23土、24日@元町映画館)

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元町映画館のイベントレポートから転載しました。

2018.06.20
映画『カーキ色の記憶』上映会&難民支援団体「RAFIQ」代表・田中恵子さんトーク開催しました!

6/17(日)、2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞に輝いたシリア人のアルフォーズ・タンジュール監督による映画『カーキ色の記憶』上映会と、難民支援団体「RAFIQ」代表・田中恵子さんのトークを開催しました。

RAFIQは2002年に発足した市民団体です。「RAFIQ」とは、ペルシア語・アラビア語で「友だち」の意味。難民と共生できる街を目指し、“友だち”として支援を始めようと立ち上げられました。

代表を務める田中さんは元保育士。アフガニスタン映画の上映会で出会ったアフガニスタンの方が入管センターに収容されたと聞き、会いに行くとまるで刑務所のような待遇に驚き、その体験が立ち上げのきっかけとなったのだそうです。

世界的問題にも関わらず、日本では普段話題にのぼることもなく関心を持つ人も少ない難民問題。まずは「難民って何?誰のこと?」ということからお話しいただきました。

国連UNHCRの統計によると、支援対象者はパレスチナ難民を含め2016年は6570万人。第二次世界大戦時の難民が6000万人で、2014年以降にその数を超えて以来、歴代最高数を更新し続けている状態だそうです。とはいえ、申請をしていなくても難民はおり、統計に出てこない数字は計り知れません。

先進国の難民受け入れはどうなっているのかを見ると、最も多いのはドイツで2016年の認定者数は26万人。では日本はどれくらいなのでしょう?申請者数は2万人にものぼりながら、同年の認定者数はなんと28人です。日本では「出入国管理及び難民認定法」が定められていますが、排除と保護が1つの法の中に収められている矛盾や、認定のみで保護政策がないことなどの問題を田中さんは指摘されました。

この3月には、シリアからの4人の難民認定を退けたというニュースがありました。一部のメディアでは「就労目的の偽装難民ではないか」との見解を発表していましたが、偽装であるという調査など何もされていないと田中さん。海外のメディアでも、日本はなぜ難民認定をしないのかと疑問の声が多く上がっているのだと言います。日本は難民“後進国”なのですね…。

6/20(水)は国連の定めた【世界難民の日】です。たとえば韓国では、俳優などの著名人がアンバサダーとなり国をあげて広報をするそうですが、日本ではこの記念日を誰も知りません。国を頼りにできない今、市民ひとりひとりに関心を持ってもらうことが大事だと田中さん。

6/24(日)には、「世界難民の日 関西集会2018」というイベントを開催されます。その他にも、映画上映会や講座、気軽に参加できるカフェイベントなど様々な企画をやっておられます。写真を見せていただくと、若い人の参加が多くて驚きました。田中さんたちのまいた種がゆっくりでも着実に育っていることの証ではないでしょうか。

紛争や内戦は遠い国で起きている悲劇であっても、難民問題は私たちの日常にあります。まずはここから考えてみませんか?

RAFIQ →
世界難民の日 関西集会2018 →

(mirai)

2018.06.22
6/16(土)『カーキ色の記憶』上映会&スカイプトーク開催!

シリア内戦を描いた優れたドキュメンタリー映画『カーキ色の記憶』
今週末6/23,24に上映2回を残していますが先週土曜日にトークイベントがありました。

内戦のシリアを離れ国外在住のアルフォーズ・タンジュール監督とのスカイプ中継です。
アラビア語の通訳は本作の上映委員会で字幕も担当した岡崎弘樹さんでした。

スカイプ前には岡崎さんによるシリアの国土、取り巻く情勢の簡単な解説がありました。
その解説で衝撃だったのは誰がシリア市民を殺しているのか?への回答です。
それは大国と結びついたアサド政権である、つまりシリア人がシリア人を殺している。

そして無事スカイプが繋がりご挨拶と現在の非常に厳しい状況を話されました。
シリアを逃れ難民になり、難民としての個の痛みを映像でどう表現するかに直面したと言われました。

その後お客様の質問タイムになりました。
こういう時になかなか質問は出てこないのですが今回は違いました。
半数のお客様から次々と、しかも良い質問(タンジュール監督)ばかりの充実した時間でした。
その中からいくつか紹介します。

質問1:問題解決への希望や道すじ、明るい見通しはありますか?
監督:私は政治家でもジャーナリストでもなく一人の芸術家にすぎない。今は希望が持てなく、解決策は想像もできない。
問題は既にシリア人の手中にはなく他の者の手にゆだねられている。
もし希望があるとしたら一人一人のシリア人が国外から帰って話し合うことができたらという個人的な希望です。

質問2:映画の題名にもなったカーキ色にはどのような意味があるのですか?
監督:シリア人同士で戦うために銃の扱い方を教えられる軍や学校での制服の色なので嫌悪すべき色です。
この色に対する感情はシリア人同士で共有しています。

質問3:アサド政権の手先となった兵士と市民あるいは難民はお互いを同胞と見れる土壌はありますか?
監督:デモに対して発砲を命じられた兵士が命令に反して離反したこともある。シリア人同士が公正な場で裁かれない限り一つにはなれない。

質問4:50年後、100年後のシリア人へ真実を伝えるために何が必要ですか?
監督:歴史の悲劇はシリア人の特権ではない。こちらから日本人に質問したい。第二次大戦の悲劇をどうくぐり抜けたのか?
私はシリアにいる母と電話で毎日話している。そういうことが50年後、100年後にも伝わるのでは。

質問5:武力弾圧と宗教弾圧がどう結びつくかイメージできないのですがどのようなことが起こっているのですか?
監督:その質問で次の作品のアイデアが浮かびました。体制がいかに宗教を使って弾圧するのかについての映画。
これはアサド政権に始まったことではなくずっと前から。
武力弾圧には限界があるので体制順応型のモスク・聖職者を作って人々を惑わしている。

スカイプ終了前にタンジュール監督からお言葉をいただきました。
今作では、山形、東京、名古屋、そして神戸で映画を理解していただいてありがたい。
また映画を作って日本でお話できる機会があればと思います。

このような場を設けて頂いた岡崎さんへ深く感謝いたします。
スカイプ前の岡崎さんの解説で、タンジュール氏は解決よりも問いを立てるために映画を作る監督と紹介されていました。
まさに映画に触発された方々がいろんな問いを監督へ投げかけたスカイプトークでした。

明日6/23(土)13:00の回上映後には本作に出演されたシリア人作家イブラヒーム・サミュエルさんと岡崎さんとのスカイプトークがあります。
皆様この機会に是非お越しください!

(高橋)



2018.06.27

6/23(土)『カーキ色の記憶』上映会&シリア人作家・イブラヒーム・サミュエルさんと岡崎弘樹さんによるスカイプトーク開催しました!


当館2階のイベントルームにて計4回上映を行なった『カーキ色の記憶』。
3回目の上映後トークは、本作に出演もしているシリア人作家・イブラヒーム・サミュエルさんとスカイプの中継により開催されました。
通訳・司会進行を務めたのは、第1回目の時と同じく、本作の上映委員会で字幕も担当された岡崎弘樹さんです。

まず岡崎さんからシリアとはどんな国なのか、この作品の持つ意味などについて、パワーポイントを使用しながら説明いただきました。70年代以降、多くの監督たちが内戦の様子を描こうとしているそうです。今作品には、答えがすぐに出るわけではないけれども、そこで経験したものを語ることで問いを立て、その上でその痛みを共有したいというタンジュール監督の思いが込められていると岡崎さんはおっしゃいます。

また実際に起こっている現実と情報が大きく異なっている点についても言及が。参加者からは、ちらほらとどよめきの声が聞こえてきました。

そしてサミュエルさんとのスカイプ中継が始まりました。

スカイプなどの通信が発達したことで、こうやって遠く離れた日本に住む方々ともお話ができると嬉しそうな表情のサミュエルさん。

何といっても作品の質問・感想について聞いてみたいとウズウズされていました。

多くの手が挙がる質問・感想タイムの中でも「今まで知り得ていたシリアの情報とメディアから聞いていた情報があまりにも違っていたので驚きました。現地にとどまっている人の現状はどういったものなのでしょうか」という質問に対する「現状、シリアでは生活という生活は成り立っていません。シリアはまだ占領されている状況です」というお答えにショックを受けずには入られませんでした。

時間の許す限り、一つひとつの質問や感想に丁寧に返答されるサミュエルさんの姿が印象的でした。

最後にサミュエルさんは「やはり、私ももう一度言っておかなければおかないといけないことがあります。2011年に革命を起こしたことに後悔はありません。最後に感想をいただいたお客さまの言葉のように、早くシリアにも春の戻りを、本当の意味での春の戻りを待っています」とおっしゃいました。

本トークイベントは、お客さま全員からサミュエルさんに向けての「シュクラン!」(アラビア語でありがとうの意味)という言葉で締めくくられました。

美しい映像の中に、シリアから出ざるをえなかった方たちの心に残る苦い記憶、心情を収めた『カーキ色の記憶』。

7/ 7からは『ラッカは静かに虐殺されている』『ラジオ・コバニ』のシリア映画2作が、7/14からはパレスチナ映画『ガザの美容室』が当館での上映を控えております。

映像に収められていることはほんの氷山の一角にすぎなかったとしても、知っていると知らないでは大きな違いがあるのではないでしょうか。

こういった作品を通じて、遠く離れた場所での同時代の出来事に少しでも目を向けていただく機会になればと思います。

(まりこ)  

■□■市民社会フォーラム第92回映画鑑賞会のご案内■□■
        『カーキ色の記憶』

【上映日時】
6月16日(土)
    18:45開場|19:00上映開始|21:00トーク〜21:50頃終了予定

 ★上映後に岡崎弘樹氏×アルフォーズ・タンジュール監督(スカイプ中継)のトークイベント

6月17日(日)
    12:45開場|13:00上映開始|15:00トーク〜15:50頃終了予定

 ★上映後に難民支援団体RAFIQ代表の田中恵子氏によるトークイベント。
  タイトル「関西にも難民がたくさん住んでいます」

6月23日(土)
    12:45開場|13:00上映開始|15:00トーク〜15:50頃終了予定

 ★上映後に岡崎弘樹氏×当映画に登場するシリア人作家イブラヒーム・サミュエルさん(スカイプ中継)のトークイベント

6月24日(日)    14:45開場|15:00上映開始

【料金】一般1,500円/学生1,000円 ※シニア料金などの割引はなし
【予約受付】
元町映画館まで電話かメールで。
各日定員に達し次第受付終了、席があれば当日受付も可。
TEL078-366-2636 MAIL: mailto:event_motoei@yahoo.co.jp

シリア人たちが物語を語る『カーキ色の記憶』/緊迫するシリア情勢に合わせ緊急上映会開催
シリアの悲劇は2011年に始まったわけではない—。1980年代、アサド体制に反発して国を去った当時の若者たちが語る体験を、監督自身の物語と重ね合わせてフィクションとドキュメンタリーで描き、2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞に輝いた映画『カーキ色の記憶』。米英仏の攻撃でさらに緊迫するシリア情勢のなか、本作の緊急上映会開催が決定しました。映画を通して、本当の世界の姿を知っていただける機会になればと願っています。

【『カーキ色の記憶』公式サイト】
HP  http://www.memory-khaki.com/
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Twitter  https://twitter.com/memorykhaki

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