元町映画館のイベントレポートから転載しました。
2018.05.02
イスラーム映画祭3/『モーターラマ』『ボクシング・フォー・フリーダム』西垣敬子さんトーク開催しました!
昨年の大好評を受けて今年はGWの開催となった「イスラーム映画祭」。初日の4/28(土)、『モーターラマ』『ボクシング・フォー・フリーダム』のアフガニスタン作品2本立て上映後に西垣敬子さんのトークを開催しました。
西垣さんは、1994年に【宝塚・アフガニスタン友好協会】を設立されてから23年にわたりアフガニスタンの女性や子どもたちへの支援活動をしてこられました。その間の渡航は42回を数えます。
1993年に東京でアフガニスタン大使館主催の写真展で戦地の様子を見て、強く感銘を受けた西垣さん。大きな感動とショックに衝き動かされ、その場で職員に交渉し地元の宝塚でも同展を開催することになりました。市の予算で開催できることになりましたが個人では認められず、急かされるように【宝塚・アフガニスタン友好協会】を設立したのだそうです。
ところが会場が広すぎ、写真だけではとてもスペースが埋まりません。いろんな人に声をかけてはアフガニスタン人のお宅を突撃訪問しまくり、展示に貸してくれるものを掻き集めたと言います。“一介の主婦”とご自身を称されますが、この行動力は全然“普通”ではありません!
写真展で集まった4千ドルを手に、初めて訪れたのがジャララバードの国内避難民キャンプでした。“難民”になるにはお金がいる、と西垣さん。貧しい人たちは戦火を避けて国内を逃げ回るほかなく、そんな人たちが集まったのがこのキャンプだったのです。酷暑で乳児は皆死んでしまったと聞き、避難民どうしで開いたキャンプ内の学校用にテントと学用品を購入されました。
1年後、2度目の訪問時は女性の姿が見えないことに目を留め、「女性はテントから出る権利も、外を歩く権利もないことに腹が立って」女性を集めて要望を聞きました。すると「刺繍がしたい」「ミシンが欲しい」と次々声が上がり、手回しミシンを30台購入して洋裁教室を開いたのだそうです。女性たちはみな大喜びでしたが、それもタリバン政権に変わると集会が禁止され教室も解散となってしまいました。
そのほかにも、使わなくなった刺繍糸をアフガニスタンの女性にプレゼントするという企画で届いた大量の段ボールで寝る場所がなくなったとか、男女が完全に分かれたアフガニスタンの結婚式ほどつまらないものはないとか、女子学生のために作った女子トイレを男性教授が常用しているとか、様々なエピソードを聞かせてくださいました。「詳しく話すと明日になっちゃう!」との言葉に笑いつつ、素敵な西垣さんのお話をもっともっと聞きたくなるトークでした。
女性たちの手による刺繍や細密画のアップが映し出されると、会場からはため息が。アフガニスタンには美しいものがたくさんあります!
(mirai)
2018.05.02
イスラーム映画祭3中町信孝先生トーク開催しました!
4/30(月)で3日目となるイスラーム映画祭3。甲南大学文学部の中町信孝先生をゲストにお招きし、『ムスリムとコプトはひとつの手 〜愛国ソングから見るエジプトの国民意識〜』と題したトークイベントを開催しました。
この日のトークの題材は、エジプトに住むコプトの少年ハーニーが素姓を隠し、新たな生活と向き合っていく『エクスキューズ・マイ・フレンチ』です。
中町先生には、ムスリムとコプトは名前で見分けがつくのか、エジプトのキリスト教徒について、音楽から見るエジプトの愛国イメージについての3点を中心にお話しいただきました。
中でも印象的だったのは、エジプトでの音楽の捉えられ方、社会に対する影響力の大きさでした。
いかに民主的な国家であるかということを示すために、エジプトでは2000年代から人気歌手による選挙応援ソング・愛国ソングが次々と作られるようになったようです。ただ、エジプトの音楽を取り巻く環境はだんだんと厳しくなってきているそうで、近年ではそうした愛国ソングを歌っていた歌手のライブ中の一言が政府の目に止まり、罰金と懲役が与えられた事件についてもお聞きしました。
またハーニーの父親アブダッラー役のハーニー・アーデルは近年多くの映画に出演する名バイプレーヤーで、元々はロックバンド「Wust el-balad」のボーカリストだそうです。こうした歌手以外の活動が増えているのも、政府に睨まれているからなのかもと中町先生はおっしゃいます。
脚本の段階でエジプトの検閲に引っかかり、書き直しを命じられたという本作。「僕らは観ながら笑ってすましてしまうけど、この作品にはエジプト社会の様々な問題を含んでいる」と先ほどまで和やかだった主催の藤本さんの表情は一気に真剣なものに。
5/2(水)にはウム・クルスームという歌手の曲がふんだんに使用されたシリアの作品『ラジオのリクエスト』の上映もございます。
各国で音楽がどのような影響力を持つのかに注目して、観比べてみるのも面白いのではないでしょうか。
神戸の5/4(金)が最終の上映となるイスラーム映画祭3。
この機会に、ぜひお見逃しなく!
(まりこ)
■□■市民社会フォーラム第91回映画鑑賞会のご案内■□■
イスラーム映画祭3@元町映画館
日 程 2018年4月28日(土)~5月4日(金)
今回は元町映画館で開催するイスラーム映画祭3です。
4/28・29・30、5/3にはアフタートークもあります。
★トークセッション
「アフガニスタンに生きる女性たち」
日 時 4/28(土) 16:10の回上映『モーターラマ』『ボクシング・フォー・フリーダム』終了後
会 場 元町映画館2Fイベントルーム
登壇者 西垣敬子さん(元「宝塚・アフガニスタン友好協会」代表)
「終わらぬ民族浄化―ナクバから70年のパレスチナの現在」
日 時 4/29(日) 15:50の回上映『ラヤルの三千夜』終了後
会 場 元町映画館2Fイベントルーム
登壇者 岡真理さん(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
「ムスリムとコプトはひとつの手~愛国ソングから見たエジプトの国民意識」
日 時 4/30(月) 16:00の回上映『エクスキューズ・マイ・フレンチ』終了後
会 場 元町映画館2Fイベントルーム
登壇者 中町信孝さん(甲南大学文学部教授)
「移民とボーダーを考える~現代ヨーロッパ映画のある種の動向について」
日 時 5/3(木) 16:20の回上映『私の舌は回らない』終了後
会 場 元町映画館2Fイベントルーム
登壇者 渋谷哲也さん(東京国際大学教授)
★元町映画館からのご案内
《イスラーム映画祭3》GW開催決定!
中東を発祥の地に、アジアからアフリカまで国境、民族、言語を越えて広がるイスラームの世界。
映画を楽しみながら世界の多様性を知ることができる「イスラーム映画祭」、昨年初めて神戸で開催した際には、連日たくさんの方にお越しいただきました。
今年はより多くの方に観ていただきやすいように日程をGWに合わせ、イスラームの文化が根付く11の国や地域から集めた12本の映画を上映します。
また、今年は多くのパレスチナ人が難民となったイスラエル建国から70年の節目にあたる年として、今こそパレスチナに目を向けるべく世界で絶賛された日本未公開のパレスチナ映画を初上映します。
★タイムスケジュール 4/28(土)~5/4(金)
★上映作品
☆日本初公開 『ラヤルの三千夜』 2015年/パレスチナ・フランスほか/103分
☆日本初公開 『エクスキューズ・マイ・フレンチ』 2014年/エジプト/93分
☆日本初公開 『アブ、アダムの息子』 2011年/インド/101分
☆日本初公開 『イクロ クルアーンと星空』 2017年/インドネシア/97分
☆日本初公開 『私の舌は回らない』 2013年/ドイツ/92分
『ボクシング・フォー・フリーダム』 2015年/スペイン・アフガニスタン/74分
『モーターラマ』 2012年/アフガニスタン/60分
『トゥルー・ヌーン』 2009年/タジキスタン/83分
『花嫁と角砂糖』 2011年/イラン/114分
『遺灰の顔』 2014年/クルディスタン・イラク/87分
『ラジオのリクエスト』 2003年/シリア/89分
『女房の夫を探して』 1993年/モロッコ/88分