元町映画館のイベントレポートから転載します。
2017.2.2
1/29(日)『でんげい』中村一成さんトークショーを開催しました!
2014年、”文化のインターハイ”ともいわれる全国高等学校総合文化祭に、在日コリアンが通う白頭学院建国高等学校の伝統芸術部が「大阪代表」として挑む姿を追ったドキュメンタリー映画『でんげい』。本作の公開を記念して、フリージャーナリストの中村一成さんにお越しいただき、共生や社会的な豊かさを考えるトークショーを開催しました。
『でんげい』はもちろん民族のアイデンティティを扱った映画と言えますが、それよりもまず青春映画として観ることができます。伝統芸術部の生徒たちが自国の伝統芸術「地神パルキ」の練習に励み、汗を流し、叱られる姿は、どこにでもいるふつうの高校生です。(但し、その技術と姿勢はレベルが高い!)誰もが彼らの姿に自身の青春時代を重ねながら観てしまうのではないでしょうか。
中村一成さんも、本作の青春映画としての側面に賛辞を贈っています。中村さんはネイティブコリアンが撮った日本の朝鮮学校が舞台の映画をいくつかご覧になっているそうですが、それらの映画は往々にして、作り手のノスタルジックな気持ちが作品を同胞意識過多のものにしてしまっていると指摘します。しかし本作は監督(作り手)自身の気持ちを最小限に抑えていて、距離感を保っているところが良いと仰っていました。
映画を入り口にして、そこから共生や社会的な豊かさについての話題に進んでいきます。近年のヘイトスピーチに見られる人種主義が奴隷制や大量虐殺につながっていった歴史を振り返りつつ、他者が他者のままでいられる社会を守ること、互いの違いを尊重し合うことの重要性を説きました。民族学校がその他者が他者のままでいられる環境をつくる基盤になるという点で、”日本に民族学校があるということは豊かなことである”と必然的に暗い話の多いトークショーとなりましたが、ポジティブにも呼びかけてくださいました。
無償化裁判など残念なニュースが後を絶ちません。しかし『でんげい』を観ることが、中村さんも仰る豊かな社会に向かうきっかけになると、私は大袈裟ではなく思います。冒頭でも触れたように青春映画としても観れますので、どうぞお気軽にご観賞ください!
■□■市民社会フォーラム第79回映画鑑賞会のご案内■□■
『でんげい』
日時:1/29(日) 12:30の回上映終了後
会場:元町映画館2F
登壇者:中村一成さん(フリージャーナリスト)
※当日映画を観られた方対象、参加無料
※トーク会場は劇場よりも狭いため、ご希望の方全員を収容できない場合もございます。予めご了承ください。
市民社会フォーラム恒例、一般公開の映画の鑑賞会。
今回は元町映画館で公開の『でんげい』です。