【動画】和田武さん講演「再生可能エネルギー中心の持続可能な社会を目指して」(2019/8/31土@神戸)

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◆要約(講演で取り扱った内容が非常に多岐にわたるため、大まかな要約となります。詳細はぜひ動画にてご確認ください)

地球温暖化防止は待ったなしの段階

大気中のCO2(二酸化炭素)濃度は、産業革命以前の270~280ppmから現在は400ppm以上に上昇している。これに伴い、地球の平均気温も約1℃上昇している。地球規模の減少は原因よりも結果が遅れるため、このままCO2濃度が上がっていけば、21世紀末には4℃前後の気温上昇になると予測されている。

すでに気温が1度上昇したことで、サンゴの死滅や氷河の減少、異常気象といった変化が現れたが、今後気温が上がることで、異常気象が普通のこととなる(異常気象の常態化)。不可逆的(回復不可能)レベルの変化が起き、人間の健全な生存も危うくなる。

北極の氷の減少、南極やグリーランドの棚氷(陸の上に氷が載っている)の融解による海面上昇が起き始めている。もしグリーンランドの氷が全て融解した場合、海面が7m上昇するとされている。これにより、海洋の島しょ国が水没してしまう危機が迫っている。

地球温暖化によって、永久凍土地帯の氷が融解することで、凍土地帯に閉じ込められていたCO2やメタンが放出される。特にメタンはCO2の20倍の温室効果がある。これによって、地球温暖化がさらに加速するという負のサイクルがぐるぐると回り始めると止まらなくなる。

海水の酸性化が進行

加えて、海水の酸性化が進行している。通常、海水はアルカリ性でpH(ペーハー)は以前は8.2程度だった最近は8.1程度に下がってきている。これは、大気中のCO2濃度が上昇することによって、CO2が海水に溶けて酸性化するからである。但し、海水中には石灰化生物プランクトンが生息し、CO2を吸収する役割を担っているため、酸性化は抑えられてきた。この石灰化生物が衰退することにより、海水のCO2吸収能力低下を招き、大気中のCO2濃度上昇につながることが懸念される。さらに、プランクトンの減少によって、魚介類などの生態系の多大な変化が起こる可能性もある。

地球温暖化に対処するため、2016年にパリ協定が発効した。パリ協定では、産業革命前と比較して、気温上昇を2℃未満に抑制する(1.5℃未満に努める)という目標を掲げ、温室効果ガス削減を打ち出した。また、2018年のIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)特別報告書では、上昇温度の違いによる生態系や気象への多大な影響差を考慮し、2℃では不十分で1.5℃未満に抑制すべきだと強調している。1.5℃未満に抑制するために、2015年には世界のCO2排出量は実質的にゼロにしなければならないとされ、対処が遅れれば遅れるほど、より急速なCO2削減が必要となる。そして、2050年以降は、温室効果ガスの排出をマイナスにしなければ、1.5℃未満に抑え込むことはできない。それほどのことをやらなければならないのである。

日本で原発をやるべきではない

和田さんは、1959年に大学に入学し、放射線高分子化学を学び、放射線のエネルギーで新しい化学反応を生み出すことを研究した。当時は原発もなく、原子力の平和利用はいいことだと思っていた。しかし、チェルノブイリ原発事故によって原発の過酷事故を始めて知った。以降、日本で原発をやるべきではないと言い始めた。結果的に、福島第一原発事故が起きてしまった。この原発事故から世界は学んだ。多くの国々が、保有している原発を動かさない、あるいは段階的に廃止するといった判断をした。現在原発を造り続けている国でも、その速度は弱まっている。ところが日本では、政権が音頭を取って海外に原発を売り込んだが、結果的に東芝、日立、三菱、全て失敗した。

世界の再生可能エネルギー利用は加速度的に増えている

世界の再生可能エネルギー利用は加速度的に増えている。総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は、2001年に約18%(原発は約17%)だったのが、2018年には25.1%に拡大している(原発は10.1%に減少)。このことを多くの日本国民は理解していない。報道が歪んでいるからである。世界では発展途上国やヨーロッパで再生可能エネルギーの導入が積極的に行われている。発電設備の増加量に占める再生可能エネルギーは2012年以降50%を超えており、最近では7割に迫ろうとしている。日本ではインドや中国が原発新設に積極的だと報じられているが、インドにおける再生可能エネルギーによる発電は原発の5.3倍、中国では7.2倍もあり、発電量の伸びも再生可能エネルギーのほうが大きいというのが実態である。

   

世界では、再生可能エネルギー100%を目標に掲げる国が53か国もある。これは世界196か国のうちの27%に相当する。また国レベルにとどまらず、自治体レベルや企業レベルでも、再生可能エネルギー100%を目標とするところが続々と増えている。

再生可能エネルギー普及のために市民ができること

再生可能エネルギーの利用は発展途上国での増加が著しいが、先進国ではドイツやデンマークなどで、普及が急速に進んでいる。普及が進んだ理由としては、電力買取制度や優遇税制などの普及推進政策を積極的に行ったことや、発電設備を市民自らが所有することにより社会的好影響がもたらされた点が挙げられる。

日本においても、再生可能エネルギーの普及を図るために、市民にできることはたくさんある。消費者の立場としては、再生可能エネルギー比率の高い新電力会社から電力を購入するといった方法が挙げられる。生産者の立場としていえば、自宅等への太陽光発電の導入をはじめ、市民や地域主体による太陽光発電や木質バイオマス発電、小水力発電などの共同発電所づくりに参画することが挙げられる。

一方で、再生可能エネルギー普及にとって逆風の動きもある。とりわけ、安倍政権下でのエネルギー基本政策では、依然として原発や石炭火力発電をベースロード電源と位置づけ、再生可能エネルギーを重視していない内容である。また、太陽光発電の出力を抑制させる動きや、太陽光発電から系統電源への接続を拒否する事例も起きている。これらの問題を解消するためには、脱原発や再生可能エネルギー推進、温暖化防止に積極的に取り組む政権を樹立することが課題である。

 

市民社会フォーラム協賛企画
非核の政府を求める兵庫の会 市民学習会
再生可能エネルギー中心の持続可能な社会を目指して

講 師 和田 武さん(自然エネルギー市民の会代表、元日本環境学会会長)
日 時 2019年8月31日(土)15:00~17:00
会 場 兵庫県保険医協会6階会議室
協 賛 神戸YWCAピース・ブリッジ、市民社会フォーラム

  世界では脱原発傾向が主流となり、先進国では原発生産は多くが中止されつつあります。
日本でも東京電力福島第一原発の事故以来、電力買い取り制度を活用しつつ、一定の再生エネルギー生産が進んでいます。
この進展の最大の成果として、自治体ぐるみの方式や組合制度の活用で、住民の手に資本出資と管理運営を握って、成果を還元し次の発展を準備するところまで来ています。
自然エネルギー市民の会代表の和田武さんに脱原発に向けた再生可能エネルギー普及の現状・可能性・課題についてお話いただきます。  

■和田武(わだ・たけし)さん
京都大学工学部卒業、同大学院工学研究科修士課程修了。工学博士。元立命館大学教授、元日本環境学会会長。専門は環境保全論、資源エネルギー論。
主な著書『再生可能エネルギー100%時代の到来』(あけび書房)、『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(世界思想社)など。現在、和歌山大学客員教授、自然エネルギー市民の会代表。