元町映画館のイベントレポートから転載しました。
2018.06.27
6/23(土)『港町』トーク:想田監督×内田樹さん×柏木プロデューサー
想田和弘監督の観察映画第7弾『港町』
元町映画館での初日に思想家であり武闘家である内田樹さんをお迎えしました。
壇上にはプロデューサーである想田監督の奥様、柏木規与子さんにも登壇いただきました。
当館が想田監督の映画を上映するのは今回が初めてです。
想田作品をずっとご覧になってきた内田樹さんがトークの司会をされました。
濃密な1時間余りのトークを抜粋でご紹介します。
内:私はこの作品をDVDで観て、そして今日スクリーンで観たわけですがこの映画のバックステージは?
想:前作『牡蠣工場』のインサートショットを撮るという目的でした。
内:『秋刀魚の味』の東野さんを思わせるような漁師さんが出てきますね。素晴らしい被写体です。全体として小津的。
想:始めはカラーでした。色調調整にすごくこだわった。重要なシーが夕暮れに起こるから港町暮色というタイトルにしようかと。
※『東京暮色』は小津安二郎の映画
柏:モノクロにしたらと言ったのは私なんですが実は良く覚えていない。色々迷っていて何かピシャッとしたのはないかって。
想田は一人で煮詰まって、エゴがすごいじゃない。
想:編集していてモノクロにはボタン一つでできます。これはいいと。カラーにすると毒々しくて観れなくなった。
トーク途中出演者の高祖さんが紹介された。後期高齢者でも現役の魚屋さん。
トラックで町の人々に配達するところは本作の見どころの一つ。
内:映画に出てくるのは高齢の方ばかり。みんなアクティヴ。
想:高祖さんはコミュニティの中心ですね。働くことはお金のためでなく人生になっている。
内:彼女はネットワークのハブ、誰が今日はコーラスに行っていないとかクライアントの生活習慣まで知っている。
内:高祖さんが荷物持つよと何回も言っていて日常言語では同じことを何度も言ってるんだって気づく。
想:ホントはこーなんです。ドラマ・台本では反復のないミニマムな形が出るけども。私の観察映画の発端は子供の頃の体験、言ったことをそのまま書き写して皆の前で読み上げたら可笑しくてウケるんですね。
内:思考・言動・行動というもので行動ってのが一番合理的ですよね。
想:考えてからじゃなくて…
内:何も喋らない動きは合理的、船の上の漁師が網や綱を操る動作は惚れ惚れするほど美しい。
柏:船に私も乗せてもらって撮るんですけど想田は無駄が多い。落ちるんじゃないかと。でも漁師さんは無駄がない。
内:あの技術もあれで絶えるんだ。漁労は農業より習得するのに長い時間がかかる。
想:商業的な漁業だけになってしまう。
内:印象的な出演者は久美子さんです。よく喋りますね。
想:柏木は前から仲良くなってよく喋ってた。僕は迫ってくる人からは逃げる。
目の前のものは素直に撮るというのが観察映画の方法論ですが。
これから延々とトークは続くのですが残念ながら紙数が尽きました。
最後に想田さんが使った映画と鑑賞者の比喩を引いて終わりにします。
皆さま、想田監督が投げる『港町』というボールを受け止めるのではなく打ち返しましょう!
(高橋)
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上映『港町』&想田和弘監督×内田樹さんトーク
日 時 6/23(土) 17:20の回上映終了後
登壇者 想田和弘監督、内田樹さん(思想家・武道家)
会 場 元町映画館
※当日映画を観られた方対象、参加無料
今回は元町映画館で公開される『港町』です。
『港町』想田和弘監督×内田樹さんトーク開催決定!
台本やナレーション、BGMなどを排した、自ら〈観察映画〉と呼ぶドキュメンタリー作品により国内外で高い評価を得る想田和弘監督。美しくおだやかな小さな海辺の町で暮らす人々の静かな声を記録し、〈観察映画〉の新境地を切り開いた『港町』の公開を記念して、想田和弘監督と思想家の内田樹さんのスペシャルトークを開催します。『港町』での比類なき映画体験は、トークでさらに極致に。ぜひご参加ください!
『港町』公式サイト http://minatomachi-film.com/
元町映画館公式サイト http://www.motoei.com/