在沖米軍普天間基地の県内移設をめぐる、沖縄県名護市辺野古沿岸の埋立に関して、国と沖縄県との間で激しい法廷闘争が続いています。これについて、三重大学の前田定孝准教授が行政法学の観点から解説をおこないました。
前田准教授は、辺野古沿岸の埋立について、公有水面埋立に関する「抗告訴訟」「関与訴訟」「代執行訴訟」という3つの法廷闘争がおこなわれていることを図や表を使って紹介。また、「沖縄県知事」「沖縄防衛局」「国土交通大臣」「農林水産大臣」、さらには裁判所や「国地方係争処理委員会」などの各機関を交えた、極めて複雑怪奇な手続きや経緯をたどっていることを説明しました。
基地問題に関し、ネット等での議論では、よく「国のほうが県よりも立場が上」「安全保障は国の方針なんだから県は従うべき」という意見が散見されます。素人考えでは、一見すると正論のように思えなくもありません。しかし、国と地方自治体との立場・関係について前田准教授は、行政法学の見地から両者は対等であるとの立場を強調しました。とりわけ、軍事基地建設に必要となる海面の埋立に限らず、工業コンビナートなどをつくる際の海面埋立の場合でも、公有水面埋立の可否を判断する権限が、国ではなく都道府県知事にあることを説明。その理由として、「その地域のことを一番分かっているのは国ではなく地元である」とし、「知事の権限を国は何と心得ているんだ、ということである」と指摘しました。これについては、1999年の地方自治法改正以前は、国から地方自治体に対して「機関委任事務」と呼ばれる業務が事実上の業務命令として委任されており、国が上位、地方自治体が下位にあったのに対し、地方自治法の改正以後は地方の権限が大幅に強化され、国と地方は対等関係になったことも強調しました。
また、前田准教授は、「翁長知事による埋立承認取消」の撤回を国土交通大臣が求めた「是正指示」について、地方自治法上必要とされる「是正指示の理由の明記」がなされていなかった不作為などを説明。「国はむき出しの権力でムチャクチャやってきているが、向こうはそれで通ると思っている。いまは、それらと行政法学のバトルの最中である」と語りました。このほかにも、行政法学の見地から、国と地方自治のあり方、基地闘争の今後についてなど、さまざまな見解を語っています。ぜひ動画を通しでご覧ください。【了】
市民社会フォーラム第181回学習会
十三藝術市民大学 社会学部
「辺野古から問う日本の地方自治」
日時 2016年6月2日(木)18:30~20:30
会場 シアターセブン BOXⅠ(大阪・十三)
講師 前田定孝さん(三重大学准教授、行政法学)
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