【レポート】『ニッポン国 vs 泉南石綿村』上映&原一男監督トーク(2018/4/21土@元町映画館)

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元町映画館のイベントレポートから転載しました。

2018.04.24
『ニッポン国 VS 泉南石綿村』原一男監督と出演者の方々のトークイベントを開催しました!

ドキュメンタリーの鬼才・原一男監督が、国賠訴訟を闘う大阪・泉南の人々にカメラを向けた最新作『ニッポン国 VS 泉南石綿村』。4/21(土)初日上映後に原一男監督の舞台挨拶と、泉南アスベストの会の柚岡一禎さん、山田哲也さん、山田直美さん、藤本幸治さん、弁護士の伊藤明子さんを交えてのトークイベントを開催しました。

8年間追い続けるなかで強まった「この人たちはなぜ怒らないのか?」という原監督の苛立ちと真正面から対峙した山田さん。理性的に裁判を進めようとする弁護団にしびれを切らし行動を起こす柚岡さん。劇中でも“見せ場”だったこの場面を再現するかのようなエキサイティングなトークとなり、大いに盛り上がりました。

伊藤弁護士を〈天敵〉と宣言しつつ、「弁護士の思う“こうあるべき闘い”からちょっとはみ出すだけで非難される」と柚岡さん。対する伊藤弁護士は「石を投げて解決するならそうしたらいい。でも意味がない」と応戦。厚労省での顛末についても、「下っ端といえど人間。いろんな人に話を聞いてもらったことは無駄ではない」と言う伊藤弁護士に対し、「厚労省の人間に赤い血なんて流れてない!伊藤さんは甘い」と柚岡さん。お互い遠慮することなく本音をぶつけ合う姿に会場の熱も上がります。そんな柚岡さんは本音もぽろり。「実は、伊藤さんには絶大な信頼を置いている。彼女がいるから自由にできる」。

「柚岡さん、弁護団、支援者…いくつものタイヤで進んでいる。1つのタイヤではここまで進むことはない」とは、キネマ旬報で原監督と対談したノンフィクション作家の吉岡忍さんの言葉です。原監督も、「柚岡さんのような人が引っ掻き回すことでエネルギーを生んでいく。水俣では、意見の異なる者は排除されてきた。泉南ではそれぞれ反目したりしながらも全員が最後まで一緒になって闘った。これは奇跡だ」と話されました。

トークの最後に柚岡さんは、「最後にこれだけ聞きたい。監督はこの映画に満足してるの?」と問いかけられました。これまで原監督が被写体としていた人たちとあまりに異なる対象を追った作品で、従来の原監督ファンは満足しているのか疑問に思ったのだそうです。「これまで撮ってきたような人は今の時代にはもういないし、現れない。ドキュメンタリー映画はその時代ごとの空気を映し出すものだから、泉南の人にカメラを向けることによって“なぜ今、そういう人がいないのか”を問いかけている」と原監督。

『ニッポン国 VS 泉南石綿村』は5/11(金)までの上映、さらに5/5(土)からはこれまでの作品の特集上映も開催します。ぜひご覧ください。

(mirai)

■□■市民社会フォーラム第89回映画鑑賞会のご案内■□■
          『ニッポン国 vs 泉南石綿村』

日  時  4/21(土) 10:30の回上映終了後
会  場  元町映画館2F
トーク 原一男監督、泉南アスベスト訴訟原告団
※当日映画を観られた方対象、参加無料

市民社会フォーラム恒例、一般公開の映画の鑑賞会。
今回は元町映画館で公開の『ニッポン国 vs 泉南石綿村』です。

『ニッポン国 vs 泉南石綿村』公式サイト 

元町映画館での上映スケジュール
4/21(土)~4/27(金) 10:30~
4/28(土)~5/4(金) 10:00~
5/5(土)~5/11(金) 15:00〜

【イントロダクション http://docudocu.jp/ishiwata/intro.php】
 2006年、大阪・泉南地域の石綿(アスベスト)工場の元労働者とその家族が、損害賠償を求め国を訴えた。
明治の終わりから石綿産業で栄えた泉南は、最盛期は200以上の工場が密集し「石綿村」と呼ばれていた。
石綿は肺に吸い込むと、長い潜伏期間の末、肺ガンや中皮腫を発症する。
国は70年前から調査を行い、健康被害を把握していたにもかかわらず、経済発展を優先し規制や対策を怠った。
その結果、原告の多くは肺を患い、発症という”静かな時限爆弾”の爆発に怯え暮らしていた。
 原は弁護団の活動や、自らも石綿工場を経営していた「市民の会」の柚岡一禎の調査に同行し、裁判闘争や原告らの人間模様を8年にわたって記録する。
原告の多くは地方出身者や在日朝鮮人であり、劣悪な労働条件の下、対策も知らされぬまま身ひとつで働いていた。
裁判に勝って、ささやかな幸せを願う原告たち。
しかし国は控訴を繰り返し、長引く裁判は彼らの身体を確実に蝕んでいく・・・
 『ゆきゆきて、神軍』から31年。
全世界が待望した原一男監督の最新作『ニッポン国 VS 泉南石綿村』は完成するやいなや、世界中の映画祭から上映のオファーが相次ぎ、いち早く上映された釜山国際映画祭と山形国際ドキュメンタリー映画祭では、それぞれ最優秀ドキュメンタリー賞と市民賞を受賞し、その評価が高まっている。